也田貴彦blog

おもに文学やお笑いについて。

M-1グランプリ2020 感想

①インディアンストップ出番の申し子のようなキャラクターで、見事に場を温めていたと思う。去年よりも余裕と落ち着きも伝わってきて、勝手なことを喋り続ける田渕とツッコミで制止するきむのコンビネーションが美しく見えた。田渕の違った一面が垣間見えると…

キングオブコント2018 感想

ネタ時間が4分から5分に変更されたことで、大会の色合いが少し変わった。近年のKOCでハネたネタには歌ネタや天丼ネタが多かったが、5分となるともっとボケや展開のバリエーション、勢いの持続のさせ方に工夫が要る。必然的に、構成力のある組が台頭してくる。…

M-1グランプリ2017 感想

こんなに観ていて疲れる番組は他にない。今年は特に芸人たちの本気がびしびし伝わってきた。とろサーモンの涙、和牛水田の悔しげな表情、ジャルジャル福徳の「おまえよく今ボケれるなあ」という一言。芸人たちは本気で演じる。こちらも本気で観る。もはや笑…

M-1グランプリ2017敗者復活戦 感想

1、ランジャタイ。個人的に最近大注目しているコンビ。しょっぱなから無茶苦茶なネタw さよならポンポン、575シチシチィ!!狂気の繰り返し。クスリでもやってるんじゃないかと思わせる危うさが魅力の、漫才界のアウトサイダー。 2、笑撃戦隊。入り方が…

R-1ぐらんぷり2018 感想

Aブロック①ルシファー吉岡。設定のひねりもあり、演技もしっかりしてるし、強いフレーズもある。「生姜をオカズにしてるのか?」「女性の裸じゃなくて、冷え性の味方」充分いいと思うけどなー、後半に大展開があればなお良かったのかしら。 Aブロック②カニサ…

キングオブコント2017 感想

①わらふぢなるおコールセンター。特異なテーマのないプレーンな場面設定をボケで埋めていくネタは、なかなかハードルが高い。この方法でいつも爆発させられるのはサンドウィッチマンくらいだろう。相手の姿が見えない(はず)の状況を利用したいくつかのボケは…

R-1ぐらんぷり2017 感想

Aブロック ●レイザーラモンRG 渋谷と新宿のドラッグ→ドラッグストアからのこんにゃくゼリーワゴンセールへの脱線、静岡民全員テロリストの理由おもしろい。ただこのパターンならもっとたくさんの地域をいじってほしい。10分くらい欲しいネタ。 ●横澤夏子 こ…

R-1ぐらんぷり2017 感想

Aブロック ●レイザーラモンRG 渋谷と新宿のドラッグ→ドラッグストアからのこんにゃくゼリーワゴンセールへの脱線、静岡民全員テロリストの理由おもしろい。ただこのパターンならもっとたくさんの地域をいじってほしい。10分くらい欲しいネタ。 ●横澤夏子 こ…

M-1グランプリ2016 感想

M-1という大会、それに漫才師への愛と敬意を込めた、自分なりの真摯な感想です。偉そうな知ったかぶりみたいなことばかり書いていますが、僕は決勝進出したしないに関わらず、プロの漫才師のすべてを激しく尊敬しています。 ① アキナ 「大人びた5歳児」のキ…

歌詞和訳 Bob Dylan "Tangled up in blue"

"Tangled up in blue" 【原文】Early one mornin’ the sun was shinin’I was layin’ in bedWond’rin’ if she’d changed at allIf her hair was still redHer folks they said our lives togetherSure was gonna be roughThey never did like Mama’s homemade…

歌詞和訳 Bob Dylan "She belongs to me"

来週ボブディランのライブに行くので予習をかねて歌詞を和訳。 "She Belongs To Me" 【原文】 She's got everything she needsShe's an artist, she don't look backShe's got everything she needsShe's an artist, she don't look backShe can take the da…

ザコシショウを笑う/笑わないの分かれ道

R-1ぐらんぷり2016で優勝を飾ったハリウッドザコシショウ。ネット上では彼の優勝を讃える言葉ももちろん多くあったものの、逆に「何が面白いのかわからない」「ただ怒鳴ってるだけ」というような否定的意見も散見された。僕自身は、獣性の解放とでもいうべき…

オールタイム漫才ネタベスト10 ⑩スリムクラブ「人違い」

ジャズミュージックの世界ではテンポの速い曲が流行したあとテンポの遅い曲が流行ったという歴史があるのを聞いたことがあるが、同じように、ネタのテンポの遅速という側面から漫才の歴史を説明することもできる。 かつて島田紳助は、当時主流だった漫才のテ…

オールタイム漫才ネタベスト10 ⑨ガスマスクガール「走馬灯」

コントと漫才の違いとはなんだろう。 動きの少ないのが漫才??衣装を着るのがコント??いろいろな考え方があると思う。僕がなんとなく思っている区別の仕方はこうだ。漫才とはセンターマイクの前に立った素(す)の芸人が主役になる表現形態であり、コント…

オールタイム漫才ネタベスト10 ⑧流れ星「ひじ神様」

漫才の設定にもいろいろあるが、世にも特異なキャラクターなりシチュエーションなりのアイデアを思いつくことができれば、「デート」「医者」「美容院」など目新しさのない設定を持ち出すよりも当然アドバンテージを得られるのは事実だろう。笑い飯の「鳥人…

オールタイム漫才ネタベスト10 ⑦千鳥「ブラックジャック」

2003年のM-1グランプリで千鳥が初めて決勝の舞台に立って以来、僕は数多くの千鳥の漫才を見てきた。彼らのネタは良くも悪くも野蛮だ。初期(2009年ごろまで)の彼らのネタは特に荒削りなものが多かった。冒頭に提示する発想は奇抜ではあるものの、あえて大き…

オールタイム漫才ネタベスト10 ⑥マヂカルラブリー「いじめっこ」

マヂカルラブリーの漫才は不穏だ。 ツカミからしてそうだ。ツカミというのは登場してセンターマイクの前に立った瞬間に観客を自分たちの世界へ引き込むための装置であり、「麒麟です」「お兄さんトレンディだね、うーんトレンディエンジェル」「小木です、矢…

オールタイム漫才ネタベスト10 ⑤笑い飯「音真似」

少々乱暴に言えば、2001年から10年続いたM-1グランプリは笑い飯のための大会であった。彼らは2002年にいわゆる"ダブルボケ"漫才で決勝の舞台に登場し、2003年に「奈良県立歴史民俗博物館」のネタで旋風を巻き起こしたが、惜しくも優勝は逃した。この2003年の…

オールタイム漫才ネタベスト10 ④ブラックマヨネーズ「引っ越し」

ブラックマヨネーズの漫才を見るたびに、良い漫才師は「ボケ」「ツッコミ」などという形式的な役割分担を超えてくるのだなと思い知らされる。彼らのネタは後半になるともうどっちがボケでどっちがツッコミなのか分からなくなることが多い。それもそのはず、…

オールタイム漫才ネタベスト10 ③囲碁将棋「隣の部屋」

自分たちオリジナルのパターン(形式)をもちたがる漫才コンビは多い。良い鋳型を発明すれば、あとはそこにボケやシチュエーションを流し込めばいくつでもネタは出来上がる。コンビの名詞代わりにもなるし、お客さんもそれを求めてネタを見るだろうからwin-w…

M-1グランプリ2015 感想

最終決戦の感想も含めて書く。コンビ名の横の数字は僕の個人的な点数。最終決戦3組を選ぶとすればメイプル超合金、和牛、銀シャリ。改めて読み返すと偉そうに理論をぶっていて厚顔不遜も甚だしく、自分で自分に「おまえは何様のつもりだ!」と言いたくなる…

オールタイム漫才ネタベスト10 ②チュートリアル「冷蔵庫」

これは不条理漫才と言ってしまってよいと思う。不条理とは何か。カフカの小説「変身」を例に挙げよう。主人公はある朝突然虫に変わる。理由は分からない。最後まで分からない。理屈にも常識にも合わない。だからこそ主人公は苦悩し、現実に抗おうともがく。…

オールタイム漫才ネタベスト10 ①麒麟「小説風漫才」

復活したM-1グランプリ決勝戦が今週末にあるということで漫才熱が高まってきて、無性に漫才のオールタイムベスト10を決めたくなった。 ただし順位はつけない。今回のタイトルも①と書いているが別に1位というわけではない。10作を決めるだけでも難しいのに、…

「東京プリズン」感想 〜不満と感服〜

赤坂真理の東京プリズンを読んだ。 主人公のマリは不思議な世界に迷い込んでいる。過去や未来の自分と電話が繋がったり、急に時空の異なる場所を歩いていたり、ヘラジカの声が不意に聞こえたり、太古の昔の天皇である大君と関わりを持ったりする。このスピリ…

「シルビアのいる街で」(ホセ・ルイス・ゲリン監督)感想

まずストラスブールという街があり、そこに暮らす人々があり、そのなかに主人公の男女が存在している。監督はその全体の広がりを表現する。誰とも分からぬ市井の人物の表情の変化、路地の歩き方、髪の揺れを繰り返し映し出し、ときには主人公の男の目を通し…

【旅行記】長島温泉、なばなの里

6月8日。近鉄特急で桑名へ。一つ前の駅の四日市を通るときはどうしても四日市ぜんそくというフレーズを思い出してしまい、その色眼鏡もあるのかもしれないが、車窓から見える工場の煙突からのたくさんの煙が気になる。桑名到着後は駅から三重交通バスでホテ…

チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』感想

岡田利規主宰のチェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』をBSプレミアムで観た。これまで岡田氏の芝居は観たことがなかったが、小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(大江健三郎賞受賞作品)は以前友人から文庫本をもらって…

東京観光 〜マグリット、ケイティ・ペリー、ハシビロコウ〜

週末は嫁と東京観光。新幹線で駅弁、海鮮丼。食後はほぼ睡眠。 品川からホテルのある溜池山王へ。ホテルは国会議事堂を見下ろす部屋。少し休憩してから乃木坂まで歩く。途中で「100%DANSHAKU」というフライドポテトの屋台で、細い芋を格子状に重ねてワッフル…

言葉の曲線を伸ばして心理との距離を詰める。

抽象化された言葉は手に負えない。「楽しい」も「悲しい」も「嬉しい」もよく分からない。「愛」や「心」や「善悪」や「美醜」となるともっと分からない。例えば小説を読んでいても、あまりに抽象的な単語が多く出てくると頭がついていかなくなる。最近読ん…

不条理であって不条理でない話

池澤夏樹個人編集の世界文学全集「短編コレクションⅡ」を読み進めている。小説を書くうえで大切な技法とかエッセンスのようなものはそれこそ数えきれないくらいあって、優れた長編はそれらを取捨選択し混ぜ合わせながら構築されていくのだろうけど、優れた短…