也田貴彦blog

おもに文学やお笑いについて。

2015-01-01から1年間の記事一覧

M-1グランプリ2015 感想

最終決戦の感想も含めて書く。コンビ名の横の数字は僕の個人的な点数。最終決戦3組を選ぶとすればメイプル超合金、和牛、銀シャリ。改めて読み返すと偉そうに理論をぶっていて厚顔不遜も甚だしく、自分で自分に「おまえは何様のつもりだ!」と言いたくなる…

オールタイム漫才ネタベスト10 ②チュートリアル「冷蔵庫」

これは不条理漫才と言ってしまってよいと思う。不条理とは何か。カフカの小説「変身」を例に挙げよう。主人公はある朝突然虫に変わる。理由は分からない。最後まで分からない。理屈にも常識にも合わない。だからこそ主人公は苦悩し、現実に抗おうともがく。…

オールタイム漫才ネタベスト10 ①麒麟「小説風漫才」

復活したM-1グランプリ決勝戦が今週末にあるということで漫才熱が高まってきて、無性に漫才のオールタイムベスト10を決めたくなった。 ただし順位はつけない。今回のタイトルも①と書いているが別に1位というわけではない。10作を決めるだけでも難しいのに、…

「東京プリズン」感想 〜不満と感服〜

赤坂真理の東京プリズンを読んだ。 主人公のマリは不思議な世界に迷い込んでいる。過去や未来の自分と電話が繋がったり、急に時空の異なる場所を歩いていたり、ヘラジカの声が不意に聞こえたり、太古の昔の天皇である大君と関わりを持ったりする。このスピリ…

「シルビアのいる街で」(ホセ・ルイス・ゲリン監督)感想

まずストラスブールという街があり、そこに暮らす人々があり、そのなかに主人公の男女が存在している。監督はその全体の広がりを表現する。誰とも分からぬ市井の人物の表情の変化、路地の歩き方、髪の揺れを繰り返し映し出し、ときには主人公の男の目を通し…

【旅行記】長島温泉、なばなの里

6月8日。近鉄特急で桑名へ。一つ前の駅の四日市を通るときはどうしても四日市ぜんそくというフレーズを思い出してしまい、その色眼鏡もあるのかもしれないが、車窓から見える工場の煙突からのたくさんの煙が気になる。桑名到着後は駅から三重交通バスでホテ…

チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』感想

岡田利規主宰のチェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』をBSプレミアムで観た。これまで岡田氏の芝居は観たことがなかったが、小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(大江健三郎賞受賞作品)は以前友人から文庫本をもらって…

東京観光 〜マグリット、ケイティ・ペリー、ハシビロコウ〜

週末は嫁と東京観光。新幹線で駅弁、海鮮丼。食後はほぼ睡眠。 品川からホテルのある溜池山王へ。ホテルは国会議事堂を見下ろす部屋。少し休憩してから乃木坂まで歩く。途中で「100%DANSHAKU」というフライドポテトの屋台で、細い芋を格子状に重ねてワッフル…

言葉の曲線を伸ばして心理との距離を詰める。

抽象化された言葉は手に負えない。「楽しい」も「悲しい」も「嬉しい」もよく分からない。「愛」や「心」や「善悪」や「美醜」となるともっと分からない。例えば小説を読んでいても、あまりに抽象的な単語が多く出てくると頭がついていかなくなる。最近読ん…

不条理であって不条理でない話

池澤夏樹個人編集の世界文学全集「短編コレクションⅡ」を読み進めている。小説を書くうえで大切な技法とかエッセンスのようなものはそれこそ数えきれないくらいあって、優れた長編はそれらを取捨選択し混ぜ合わせながら構築されていくのだろうけど、優れた短…

小説に立ち向かうための手がかり

2年以上、同じ小説を書いている。 ほぼ全体像はできてきてあとは細部の推敲という状態だが、原稿用紙換算で約300枚、多いように見えるかもしれないが2年かかってこれだけというのはもちろんプロの作家ではお話にならない枚数である。 小説を書いていると、気…