也田貴彦blog

おもに文学やお笑いについて。

R-1ぐらんぷり2018 感想

Aブロック①ルシファー吉岡。設定のひねりもあり、演技もしっかりしてるし、強いフレーズもある。「生姜をオカズにしてるのか?」「女性の裸じゃなくて、冷え性の味方」充分いいと思うけどなー、後半に大展開があればなお良かったのかしら。

Aブロック②カニササレアヤコ雅楽版「細かすぎて伝わらないモノマネ」か。淡々とした雰囲気づくりと物珍しさで笑わされるけど、どこかで見せ方の変化や爆発ポイントがつい欲しくなる。

Aブロック③おいでやす小田。設定はプレーンなんだけど、さすが怒りのボルテージの持っていき方が鮮やか。どの電話も下手すると本当にありそうな内容で、観てる側が怒りに共感できるのでこのくらいが良いのかな。個人的には、もっとクセのある電話でもよかった。

Aブロック④おぐ。宮迫の「間接的な自虐ネタ」というのは言い得て妙。ハゲが別人に扮してハゲへの偏見を言うという構造。「ハゲなのにルンバ」。話者をずらすことで単なる自虐よりも押し付けがましさが軽減され笑いやすくなる、なるほどなーと。あと音楽の使い方うまい。

Bブロック①河邑ミク。演技の切り替えが絶妙。レンタル彼女という設定も現代的でいい。ただ展開は想定内に留まったかな。

Bブロック②チョコプラ長田。理不尽な音声にツッコむネタは多いけど、小道具でも理不尽さを足してきたのが新しい。機械的に進行していく相手に翻弄される滑稽さが、手数多く緻密に描出されている。最後はもっと派手にぶっ壊れてもよかったかも。

Bブロック③ゆりやんレトリィバァ。昭和の女優。終始「おまえこのキャラやりたいだけやろ」というような雰囲気が素敵で、あざとくボケずにキャラに入り込んで笑わせる、友近的方法論のネタ。木登りという場面作りのナンセンスさもいい。

Bブロック④霜降り明星せいや。そうかー、オールザッツでやってた、延々無茶苦茶やるバージョンはさすがに賞レースではできないか。それぞれのネタの最後に自分でツッコむ形式にして、シュールさが薄まった。オールザッツのは紛れもなく新時代を告げるネタだったけどなー。

Cブロック①濱田祐太郎。「視覚障害者が自分の耳疑うことなんてそうそうない」「見えへんけど二度見しました」純粋に人を笑わせたい心意気が伝わる堂々とした漫談。悲壮感や卑屈さ、気の毒さを全く感じさせない立ち振る舞いがすごい。生き様を笑いに変える格好良さ。

Cブロック②紺野ぶるま。女芸人グランプリのときと同じタイプの、高飛車な女キャラ。単に高飛車なだけでなく、そんな自分をどうにもできないというある種の悲しみがあって好きだが、見る人によっては嫌味なのかな。「腹立つけど憎めない」の「憎めない」をどう出すか、か。

Cブロック③霜降り明星粗品。持ち味である「ニッチなボケをツッコミで気づかせる」タイプの、センスのみなぎる細部の連発するなか、しょうもないダジャレも入れる緊張の緩和も完璧。ただ脈絡のない単発の羅列なので確変笑いには繋がりにくいか。

Cブロック④マツモトクラブ。いつもの人情味のあるストーリー仕立てコントで、持ち味は発揮されてるんだけど、裏を返せば驚きがない。「マツモトクラブらしさ」に捕らわれてるように感じてしまう。異能の持ち主だと思うし、もう一段階、裏切りや破綻や無茶が見たい。

最終決戦①おぐ。一本目のアンサーネタという趣は、工夫されてるといえばそうなのだけど、一本目のボケを裏返したタイプのボケが多く、さらなる別展開が見たかった。

最終決戦②ゆりやんレトリィバァ。彼女の魅力は、ランダムに繰り出すあるあるではなく、何の脈絡もなくダンスを踊り出す部分のような、「やりたいからやる」という図々しさと度胸にこそあると思う。

最終決戦③濱田祐太郎。盲学校の生活にツッコむ内容だけでも新鮮で面白いが、フレーズもよく練られてる。「何このスパルタ教育は」「心の目で見えたら盲学校きてないねん!」どんな境遇でも笑って暮らせるんよな。それを教えてくれてありがとうと言いたくなる爽快な優勝。